ロー卒法務マンがチラ裏に書くブログ

法科大学院卒民間企業法務マンによるブログ。チラシの裏の2枚目。不定期更新。

【新人法務向け】法務に大切なこと(心得)とは?

今回は、現職を辞めるときに社歴が短いメンバー向けに書いた退職エントリーをブログ向けに再編集して再掲したいと思います。
 
「法務担当者にとって大事なこと」について私見を書いてみました。
主にこれから法務担当者になる方向けのエントリーになります。
 
この手の内容は、『ビジネス法務』(中央経済社)などの雑誌(※)を始めとして広く言われているようなものかもしれません。
 
(※)『ビジネス法務』だと、組織論であれば2018年1月号の特集や2018年11月号の特集、心得的なものであれば2018年6月号の特集などが挙げられるかと思います。
 
人によって大事だと考える要素は変わると思いますので、法務5年目の若手の一意見としてご参考いただければ幸いです。やや長文となりますのでご容赦ください。

法務の仕事を通して大事なことは、以下の3つだと考えています。

 

これらは、法務の世界に初めて飛び込んだ企業で上司や担当役員から学び、現職を通じて特に実感していることです。そして、今後も、自分自身も以下の3点を自戒にして、また軸として持ち続けて精進していきたいと思います。

①:「経営への貢献」と「事業への貢献」(「攻めを護ること」)

法務は、法的なリスクを始め様々なリスクを考慮して事業を検討する側面が大きい部署であることから、ネガティブチェックやブレーキを踏む役割となりがちです。
 
しかし、NGを出すだけが仕事ではありません。リーガル面からサポートして事業を進めるのが本来的な役割*1だと考えています。
 
よく、事業部と法務の関係を、車の「両輪」であったり、車の「運転席と助手席」に例えられることがよくあります。
 
僕もこれらと似たような見解ですが、同様に例えるなら、特に、「教習車の教官席(補助ブレーキがある席)」が近い役割かなと思います。
 
つまり、基本的には一緒に運転手をナビゲートしつつ、道から落ちそうになったり、前の車にぶつかりそうになった場合に補助ブレーキを踏んで事故にならないようにする役割が法務だと思います。
 
以上から、事業を進めさせてあげることを前提に、最小限のガバナンスを利かせるところに法務としての価値があるのかなと考えています。(これを「攻めを護る」と表現していました。とてもわかり易いワーディングだと思って僕も胸に刻んでいます)
 
なお、僕はかなり慎重派な性格と認識しているので、後ろ向きに(硬めに)判断しがちな面があります。
 
そこで、まずはOKにできるような根拠(法律構成など)がないかをまず検討し、仮にNGを出すときは、OKに近い形でのスキームを対案として出すよう心がけて業務に当たるようにしていました。

②:批評家にならない

①と重なる部分はありますが、どうしても回答する際にリスクをヘッジしすぎて説明が長くなりがちです(私自身も自戒を込めて)。
 
しかし、事業の現場で欲しいのは「OK」なのか「NG」なのか判断するための材料そのものです。説明をしすぎて評論家にならないようにしなければなりません。
 
そこで、事業部(場合によっては子会社など相談者)のスタイルに合わせて適切な言葉を使って判断材料を提供する*2のが法務の役割だと考えています。「適切な言葉」を使うためには、状況に応じて専門用語を噛み砕くスキルが求められます。そのため、付随的に「言葉を磨く」必要もあると思います。

③:法務は情報が命。「社流」と「時流」を見極める。仲間を知る。

最後の要素として、法務は「情報」が命だと思います。
 
「情報」とは、法改正情報だけではありません。
 
自社がどこに向かっているのかという流れ(社流)やあらゆる時代の流れ*3時流)も含まれます。
 
社流・時流を知った上で判断するのと、全く知らずに判断するのでは結論の質にも大きく左右します。
 
僕は、新聞やビジネス誌を在職中もできる限り読むように心がけてきました。これは、時流を把握するうえで個人的には大変効果があったように思います。
 
また、仲間(事業部や事業のこと)を知ることも大事な要素だと思います。
 
その前提として、事業部の方から「話しやすい」と思える関係性を築けていけるかのスキルも求められると思っています。この関係性を築けているか否かで自分に入ってくる情報量も全然違います。
 
事業部の方と何気ない話をしている中でリスクとなる事象を拾えることもあります。さらに、色々事業部の方から教えてもらうことで、より深く自社の事業を知ることができます。
 
そのため、自分の判断材料を増やす意味でも、自部署以外のメンバーと良好な関係を築くことはとても大事だといえます。
 
僕自身、法務キャリアを築いた最初の職場でも、直属の上司から、「事業部の方と仲良くなって飲みに行けるくらいの関係にはならないとダメだよ」とよく言われていました。
 
今はこのコロナ禍の状況なので、一緒に実際に飲みに行くのは難しいかもしれません。したがって、今の時勢を踏まえるならば、「オンライン飲み会などもできる関係性」ということになります。 
 
事業部との「距離感」についてはとても難しいところですが、僕は、法務部署が「職員室みたい」と事業部の方に言われたらおしまいだと思っています。よって、上記の観点からも、法務は事業部に身近な部署であるべきだと考えています。
 


以上です。最後まで乱文にお付き合いいただきありがとうございます。
 
偉そうな感じで申し訳ありませんが、現時点で僕が考える「法務の役割と大事な要素」について、自戒も込めて、再編集して改めてアウトプットしてみました。
 
これから企業法務人生を歩む方の一助にもなれば幸いです。

*1:事業部からも誤解されがちではあるのですが、僕はどちらが上、下というような「上下関係」ではなく、フラットな関係だと考えています。

*2:①で詳述できませんでしたが、法務の観点から経営判断を行うための「材料」を提供し、経営判断をサポートすることが、法務による「経営への貢献」だと考えます。

*3:大きなところでは、自社が世間からどのような見られ方をしているのか(世間の目線)、監督官庁金融庁消費者庁など各省庁)がどういうところに注意を光らせているのか(自社事業に関わる監督官庁の動き)、自分たちの業界団体が諸問題に対してどう動いているか(業界の流れ)など